IN THE RIVER

大体はゲーム日記。そうじゃない日記も書く。

「ブルーアーカイブ」の翻訳問題から透ける運営の不誠実さ…低品質を「新しい試み」と言い訳してしまうのはシナリオゲームとして最悪の対応

 「ブルーアーカイブ」起きた翻訳問題の顛末と、運営の不誠実さについて。

 

 

ブルーアーカイブで何が起きていたのか

 事の発端は2024年3月27日に実装されたゲーム内イベント「にぎにぎと ゆきゆきて」である。シナリオテキストについて、SNS等でちょっとした炎上騒動になった。例えば先生*1が、生徒の衣装に対して「馬子にも衣装」だと悪口を言う。「警覚心*2」といった謎の単語が登場する。その他誤字・脱字や、一文が過剰に長く読みづらい文章…等々。

 そもそもブルーアーカイブは韓国パブリッシャー(Yostar)のゲームである。つまり今回のケースでは、シナリオ翻訳の品質が低すぎるとユーザーから不満の声が挙がっていた。前述の「馬子にも衣装」は韓国では褒め言葉として使用されており、「警覚心」は韓国語独特の単語。これは本来行われるべきローカライズを怠っているのではないか、また直訳したような表現・文章も多々見られたことから、機械翻訳を使用しているのではないか、といった疑念が広がっていた。

衝撃の言い訳。機械翻訳のような翻訳で「作品への理解の深化に繋がる」…!?

 運営側が声明を発表したのは、実装から1週間以上経過した4/5だった。謝罪文をXに投稿するとともに、シナリオテキストの修正が実施された。

 驚愕なのは運営の言い訳である。なぜこのような低クオリティなシナリオテキストので実装されてしまったのかについて、彼らの弁明は以下の通りだ。

かねてからコンテンツ実装の際に、ローカライズ及びカルチャライズを行う過程で 「原作の意図・設定を十分に反映されてないものになっているのか」という点が幾度も議論・協議されていました。
議論を重ねた結果、 本イベントにて、一度ローカライズ及びカルチャライズ段階で 手を加えていた要素を排除した形でのシナリオテキストをお届けすることを決定い たしました。
このような新しい試みに対する不安はありましたが、 原文をよりダイレクトに提供 することで、作品への理解の深化につなげられるかもしれないと考えておりました。

 つまり今回の翻訳は、決してスケジュール逼迫や予期せぬトラブルではなく、意図的に作成されたものだということ。しかも、その理由が「ローカライズを意図的に怠ることによって、より作品を理解できるだろう」という斜め上な発想から来たものだという。

 例えば日本人に「警覚心」の意味を理解できる人がどれだけいるだろうか?韓国語に造成の深い人ならともかく、ほとんどの日本人は初めて出会う言葉だろう。「警戒心」の書き間違いかと思うだろうし、「警覚心」が韓国語独自の表現である以上、日本人がその意味を真に理解できることはない。調べたところで「警戒心と近い言葉なんだな」半ば無理やり納得する他ないのである。「警覚心」をそのままシナリオに出したところで、作品への理解の深化に繋がるどころか、真逆の結果になることは明らか。そのノイズを除去し、日本人がより理解できるようにするのがローカライズの本来の役割ではないか。

誤字・脱字の多さも「ポジティブな挑戦の結果」と言い張るのか?

 彼らは今回の騒動を、さもポジティブな挑戦に対する失敗であると弁明している。しかし彼らの主張は大きく矛盾していると言わざるを得ない。仮に「原文をダイレクトに提供する」ことが目的であったとして、あまりに多すぎた誤字・脱字も原文そのままだというのだろうか?

 例を上げると、「聞いたことも、見たことないお祭りが、さまざま形で開催されてるんです!」は一文だけで二箇所誤字*3があることが分かる。このレベルの誤字・脱字がシナリオ終始に渡って登場する。

 

 最低限の誤字・脱字すら修正しなかったのは、単なる手抜きであったと判断されても仕方ないのではないか。結局のところ彼らは批判を避けるため、ユーザーのために行った施策の結果であると主張しているのである。

シナリオが評価された作品で、シナリオを崩壊させるユーザーへの裏切り

 ブルーアーカイブは押しも押されもせぬ覇権ゲームへと上り詰めた。本作が評価されたのはシナリオのクオリティ高さ故である。去年公開されたメインシナリオ「あまねく奇跡の始発点」で非常に高い評価とともに、大きく話題になった。つまりユーザーはシナリオを期待して本作をプレイしているのである。にも関わらず彼らは意図的にクオリティを下げ、読むに耐えないテキストを差し出した。これはユーザーに対する裏切り行為ではないのか。

 一番恐ろしいのは、もし炎上していなければ、メインシナリオにもこのクオリティが反映されていたかもしれないということだ。手抜きがどこまでユーザーに許容されるかを、実際にリリースする形で試してしまった。一度でも手抜きを体験すれば、ユーザーは新しいシナリオがリリースされるたびに、疑いの目を向けざるを得なくなる。彼らがブルーアーカイブにつけた傷は、今回のシナリオだけに留まらないだろう。

*1:ブルーアーカイブにおけるプレイヤーのポジション

*2:警戒心ではない

*3:「聞いたことも、見たこともないお祭りが、さまざまな形で開催されてるんです!」だろう